ペガサス有志Miniラン
「桐生足尾界隈」 1998年(平成10年)4月29〜30日
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山肌を覆う新緑の中に紫色の藤の花が映えます |
このリポートは絹織物で有名な桐生から三境山を越えて足尾銅山へ続く道と大滝周辺のサイクリングの記録です |
朝6時、いつもの場所に集まった仲間が自転車をVANに積むとすぐに出発です。大型連休の初日とはいえ人出は少ない様子で甲州街道・環八・外環・東北道と順調に進み羽生サービスエリアには予定より40分の早着となりました。ここで埼玉のメンバーと合流し桐生へ向かいます。
桐生駅前の駐車場で準備を整えていますと、この日のゲスト地元のサイクリストお二人の登場。幹事が下見に来たときに出会った方々で草木湖まで一緒に楽しもうと言う事です。
桐生川に沿って上流へと向かいます、谷が深くなってくると目の前は桐生川ダム、高度差150m程を一気に登った見晴らし台からの景色は残念ながら春霞に覆われていました。満開の八重桜を愛でながら湖岸を走ります。
ダム湖が終わると道は勾配を強めながら川に沿って上流へと続きます。途中ぽつりぽつりと集落が有りバスの折り返し場のある石鴨で道端のお社に参拝するとお祭りの最中で村の人達が食べて行け飲んで行けと心のこもったもてなしをして下さいました、赤飯に山椒の佃煮のおいしかったこと温かいもてなしに自転車で来て良かったと感激しました。
途中で昼食にしましたが登りの途中という事もあり腹六分目で止めておきました。延々と続く道は快適ですが坂のきつさは相当なもの最近はやりの直登林道風でぐんぐん登ります、慰めは鶯のうたごえと薄紅色の八重桜、所々に紫の藤の花も見えます。
どうやら峠のトンネルに着いて記念撮影、一気に下ると思いきや低い峰を越える峠がもう一つ有るとのこと、下りの余力で登ってやれとばかりに50キロまで加速しても勿論登り切れません。峠と思った所で一休みし走りだしたらまた登り、こちらが本当の峠でした。後は草木湖までつづら折りを急降下、正面衝突に注意してひたすら落ちて行けばミシュランの650Bは絶好調、直線・カーブ・ヘアピン何でもござれあらゆる状況で「楽しく快適」でした。 …ここでゲストのお二人とはお別れです、ありがとう。
私達はダム右岸を走り沢入(そおり)駅へと向かいました、ダム右岸は緩い登り下りの快適な道です。渡良瀬川に沿って走るわたらせ渓谷鉄道は単線でここ沢入駅ですれ違います、駅前の広場でやけに人なつっこい飼猫と遊んでから国道122号線に入りました。8Kmほど車の多い街道を我慢して走りわたらせ渓谷鉄道が国道122号線を跨ぐ直前を銀山平方面に左折します。
良い雰囲気です、足尾銅山の支坑が有った関係でしょうか狭いながらも道路の状態は良く右側の崖には煉瓦積みの跡があったり鉱山住宅の廃墟が有ったりします、だんだん夢の跡といった雰囲気になって来たなかを走ると小滝坑跡地の記念公園に着きました。この谷あいに一万人から住んでいたとは、鉱山住宅の配置図を見る限り一つの長屋に100人から住んでいた事になります。
今はだれもいません。
なんとなく重くなった気持ちを奮い立たせて本日の宿、かじか荘園目指して最後の登りに入ります、長い登り、きつい登り、まだ着かない、真紅の花が満開のあの木は紅梅かな、まさか今頃。ああ着いた、あれキャンプ場だ宿はこの上だ。ギヤをインナー/ローにして登ると立派な建物、やれやれ着きました。
汗だくで走ったのでさっそく温泉に入ります、ここは泉質が良く手足を思い切り伸ばして疲れを癒します。夕食後にもう一度入って明日に備えました。
本日の走行距離58Km
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一夜開けて天気は上々、でも少し寒いようです。昨日来た道を下るのならこれほど楽なことは無いのですがそんな甘えた考えは通用しません、修験者の千日修行もかくやと思わせるペガサスミニランはひたすら登ります、寒いなどとは思いもしません。登りの距離は2Kmほどで200メートル登るのです。
明治初期に数戸・数十人が住んで居て畑作をしていたという集落の跡地で一息いれ、かもしかの遺体に驚き桜吹雪の中で息を整えます。厳しい坂をひたすら登ります、ギヤ比は直結、まるで階段をのぼっているようです。
峠からの眺めは何か違います、違和感を覚えながらウィンドブレーカーを着込んで下りますと銅山へ向かって辺りの景色はどんどん異様になって行きます、新緑の季節というのに緑が無い、木は生えていますが葉がほとんど無くとても寂し気なのです。
足尾銅山本坑入口跡地、百聞は一見にしかず。
足尾の町はかつての賑わいの余韻を残してひっそりとしております。初夏の日差しの中を昨日登った122号線を下り沢入(そおり)から右手(西)に入ると立派な林道です。
ここも近年計画された林道なので直登林道です、修験者には持ってこいの勾配ですが楽しいサイクリング向きでは有りません。「登るクライムではなく泣くクライ」ではないのかなと駄洒落を考えてしまいました。
沢入から途中のバラ沢峠までは5Kmで標高差500m、立派な杉林の中を道は真っ直ぐ延びて行きます。唯一の水場で小休止します、沢水をひいた水場には立派なお手洗いと林業会社の休憩所がありわずかに開けた平地に八重桜が見事な花を咲かせていました。
水場を200mも行くと道が2つに別れます、右に行くと寝釈迦経由で見晴らし台に出ると書かれています、寝釈迦の説明図にはお釈迦様が寝そべっている絵が描いて有りました。行って見たい気もしましたが寝釈迦の先は本格的な山道ということなので次の機会の楽しみに取って置くことにして先を急ぎます。
沢の方からカジカの鳴き声が聞こえて来ます、しばらく登って雑木林にたどり着くと鶯がホーホケキョと鳴いています、ケキョキョキョキョが付かないので鳴き始めと理解します。
この辺りではグループは完全にバラバラになっていて各自のペースで登っています、ちょっと早いのですが弁当を使うことにして砂防ダムの堤防の上でおにぎりを頬張ります。沢の音と鶯の鳴き声で食べる弁当はまた格別です。腹五分目で止めてゆっくり登ります。メンバーの一人が樹上を見上げています、「モンキー」えっモンキー?はぐれ猿が木の芽を食べています、しばらく見ていると困った様な仕草をします邪魔をしては失礼なので再び走り始めると後ろで猿が木から下りるような音がしました。
幾らも走らない内にバラ沢峠に着きました。この先は緩い登りなので一息入れて皆で弁当を食べていると、山からお猿が降りて来てぼくにもおにぎりちょうだいな、とおねだりするのです。
猿に餌を与えるなの看板を近くで見掛けていましたのでどうしようかと思いましたが、写真を取ってそのモデル料の名目で会計処理をすれば良いとして煎餅やナッツを支払いました、煎餅などは直接手渡ししました。この猿まだ若く見えましたので伊豆辺りから遊山に来たのかも知れません。
見晴らし台までは普通の峠道クラスの勾配ですがやけに緩く感じました。高い所にはサイクリストとアマチュア無線が良く似合うという言い伝えは古文書にも散見されるそうですが此の見晴らし台も例外ではありませんでした。春霞がなければ素晴らしい眺めなのでしょう。ここで下りに備えて上下ともウインドブレーカーを着込みます、4月30日の標高1200mの気温は登るに暑く下るに寒いのです。
大滝の公園までは7kmで500m下ります、自動車とちがい自転車は腰のひとひねりで曲がるので楽なものです、最新の高性能タイヤのおかげで思い切り下れるのであっと言う間に自動車に追いついてしまいました。異常な勢いで近づく自転車に驚いたのか避けて譲ってくれました、ありがとう。ペダルを踏まなくても50Km以上まで瞬く間に加速してしまいます、コーナー手前でブレーキをかける、対向車が居ない・停車中の車も居ないことを確認してブレーキを緩める、引力に引っ張られて加速しながら車体を倒してコーナーを回る、車体を起こしブレーキを解除して次のコーナーまで落ちて行く。これを何十回か繰り返すと大滝の公園が左手の川原に見えて来ます。
公園では若者たちのグループがバーベキューをしていました、最近は玉葱や人参などの野菜を切ってから洗うのがトレンディーなようです。
大滝は公園の中の細い道を300mほど登った所にあるトンネルを抜け、袈裟橋という朱色に輝く吊り橋を渡ってようやく展望台にたどり着く難コースです。ここは歩く価値が有ります、落差が有り水量が豊富なので立派な滝です。
大滝からの下りも急坂ですが気温は標高700mと言うことも有って大分温かくなっています、ウインドブレーカーを脱いで下ります。山肌にピンクの桜や紫の藤の花が咲いているのを瞬間に見ながら飛ばします。122号線までの10Kmはカーブも少なく高速走行が楽しめました。
小中で122号線に出ます、交通量の多い国道を避けて対岸に渡ります。橋は小意気な吊り橋で記念撮影にもってこいです。のどかな景色の中を渡良瀬川に沿って走りますと対岸のわたらせ渓谷鉄道をはしる気動車が模型のように見えて皆がニヤニヤ笑顔になります。
突然通行止めの看板が出ています、見ると道路が30mほど崩落しています、迂回路の指示に従って行くとスキーのジャンプ台を下から見上げるような坂道に出ました、私達は修験者だったのか、大滝に寄るのは修験者だけに許されることなのだなと観念して登りました。
混雑する122号線を避けて渡良瀬川の左岸を走って来ましたが川を渡り大間々駅前に抜けます、駅の裏手で再び渡良瀬川の左岸に渡り桐生市内を目指して走ります。5時まぢかになった為に交通量が増え市内は渋滞です、道が細いので車をすり抜けるのに一苦労です。5時15分桐生駅前に到着、全員事故も無く二日間に渡るミニランは終了しました。
本日の走行距離65Km
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この後、VANに自転車を積み込んで帰りましたが、「丸いハンドルを握ると道を間違える」というサイクリストに古くから伝わるジンクスどおりに道を間違え東北道に抜けるはずが関越道に出てしまいました。
おしまい